お昼時にビジネス街に現れるお弁当販売ワゴン。あのお弁当がどこで作られているのか、考えたことはありますか?
調べていくと、「ゴーストレストラン」「シェアキッチン」「クラウドキッチン」という言葉に行きつきます。実はこれらの言葉は、最近のビジネス形態から生まれていて、不動産業界にも新たなビジネスチャンスをもたらすようです。
本記事では、ゴーストレストラン、シェアキッチン、クラウドキッチンの解説と、それらのビジネス事例についてご紹介します。
「ゴーストレストラン」、「シェアキッチン」、「クラウドキッチン」とは?
まず始めに、それぞれの用語を解説していきます。
「ゴーストレストラン」は、店内で飲食するスペースを持たず、自店舗スタッフによるデリバリーも行わないレストランを指します。「UberEATS」等デリバリー専業のサービスを利用して飲食物を提供しており、別名「バーチャルレストラン」とも呼ばれています。
この「ゴーストレストラン」での調理は、「クラウドキッチン」「シェアキッチン」、既存の飲食店のキッチンスペースを「間借り」する形で行われることが多いようです。
「ゴーストレストラン」のメリットは、既存のプラットフォームを使って飲食業ビジネスを始められるため、初期投資費用が少なくすみます。
「シェアキッチン」には、大きく分けて2種類の形態があるといわれています。
- コミュニティスペースとしての役割を果たすキッチン
- 飲食店(や菓子店)が、共同で使うキッチン
従来は、1.の「コミュニティスペース」の意味合いで使われることがほとんどで、例えば寮やシェアハウスの共同キッチン、レンタルキッチン、キッチン付スペースなどを指しました。
2.の「シェアキッチン」は、1つの厨房を同時に複数の飲食店が共同利用する場合と、1つの厨房を複数の飲食店が時間や曜日ごとに入れ替わりで利用する場合があります。
本来、作った料理やお菓子を不特定多数に販売する場合は、「飲食店営業」「菓子製造業」の許可を取得した設備(厨房)で作る必要があり、この高額な設備投資額が起業の壁になりがちでした。しかし「シェアキッチン」なら、この設備(厨房)を複数の人で共有することで、初期設備投資を抑えることができます。昨今の「シェアリングエコノミー」「スモールビジネス」「週末起業」等の言葉とともに広まってきた概念といえます。中には、飲食スペースをもつものもあります。
「クラウドキッチン」は、インターネット注文や専門のデリバリーサービスを利用した、客席のないキッチンのみの店舗のことを指します。ゴーストレストラン向けに特化したシェアキッチンといえます。
「間借り」は、既存の飲食店の空き時間を借りる形態です。たとえば、居酒屋は通常夕方から夜にかけてお店を開いています。昼の居酒屋はというと、ランチ営業をしていたり、夜の仕込みをしていたりするのですが、その時間、他の飲食店に「レンタル」しているところもあるのです。
「間借り」の場合には、上記の「シェアキッチン」「クラウドキッチン」とは違って飲食スペースもあったりします。その場合には、飲食スペースもお借りして、モーニングやランチ営業もできますし、キッチンスペースだけを借りて、「クラウドキッチン」のような使い方もできるのです。
貸スペースの中には、「キッチン付レンタルスペース」というものもあります。これは、貸スペースに「キッチン設備がある」ということであり、「飲食店営業」「菓子製造業」の許可が取得できる設備(厨房)がついていないところが多いようです。
このレンタルスペースでは、販売用の料理を製造するのではなく、「食べ物のワークショップ」を開いたり「食べ物の撮影」などの用途で使われることが多いようです。
これらの実店舗を持たないかたちが注目される理由とは?
そもそも、飲食店を開業するためには、物件取得費用や店舗投資費用(内装・外装工事、設備・備品購入等)といった多額の「初期コスト」が必要です。そのため、一度構えた店舗から動くことが難しく、店舗コンセプト、立地、内装等の決定に時間をかけなければなりません。
一方、飲食事業の廃業率は非常に高く、1年未満で閉店した割合は34.5%、さらに、開業3年では約7割が廃業し、10年後も営業している飲食店はわずか1割程度といわれています。
「シェアキッチン」「クラウドキッチン」は、この多額の初期費用を抑えられ、損益分岐点を下げることが可能です。初期投資費用が少ないことから、挑戦的なビジネスをしやすくなっています。
【事例】ゴーストレストラン、シェアキッチン、クラウドキッチン
1. Kitchen BASE(キッチンベース)
「Kitchen BASE(以下キッチンベース)」は、株式会社SENTOENが運営する、複数のゴーストレストランが入居するシェアキッチンです。厨房にはそれぞれ独立した4つのキッチン設備に分かれており、この4つのスペーhttps://kitchenbase.jp/スを昼夜2回転でシェアできます。
「キッチンベース」の大きな特徴は、デリバリープラットフォームの準備は「キッチンベース」が行っていることです。そのため、入居する飲食店は、料理提供のみに専念できます。
2. The Vegetarian Butcher Delivery
「The Vegetarian Butcher Delivery(ベジタリアンブッチャーデリバリー)」は株式会社ベジタリアンブッチャージャパンが経営するゴーストレストランです。従来の大豆ミートと一線を画した「プラントベースミート(植物由来代替肉)」を使ったハンバーガーのお店です。
「プラントベースミート」自体、マーケットが未開拓の商材であるため、まずは省コストで始められるゴーストレストランという形態で運営しています。現在都内に2店舗、2019年12月中旬にはさらに3店舗のゴーストレストランがオープンし、ゴーストレストランで製造したハンバーガーを、UberEatsや出前館といったデリバリーシステムで届けています。
3. よじげんスペース
「よじげんスペース」は、株式会社よじげんが経営する、インターネットを使った間借り店舗の情報サイトです。貸す側のお店は、間借り可能な日時や場所、広さなどを情報掲載し、借りる側は情報サイトから借りたい物件を探すことができます。
「間借り」では、借りた人が設備を壊したり、賃料を支払わなかったり等のトラブルにつながる場合も。よじげんスペースが仲介することで、このようなリスクを軽減できます。
まとめ
いかがでしたか? 本記事では「ゴーストレストラン」「シェアキッチン」「クラウドキッチン」をご紹介してきました。
「ゴーストレストラン」「シェアキッチン」「クラウドキッチン」は、賃貸不動産の新たなビジネスの可能性を見いだしているといえるのではないでしょうか。このような不動産や設備をシェアして成り立つビジネスは、飲食業から他業態へも波及していくのかも知れません。今後の隆盛に目が離せませんね。
本メディアでは、今後もこのような不動産業に関する情報や最新の不動産テックの情報などをお届けして、不動産事業者のサポートをしていきます。