「IT重説のやり方を知りたい」
「IT重説を実施するときに気をつけなければならないことを知りたい」
本記事はそんな方のための記事です。運用開始から2年が経ち、徐々に広がりつつある「IT重説」。いざ取り入れようとするとき、どのような準備が必要なのか? 必ず守らなければならない点は? その他、押さえておくべき点はどこか…と、導入に向けた準備で立ち止まってしまうこともあるのではないでしょうか。
そこで本記事では、スムーズにIT重説を導入するためのポイントをまとめてお伝えしていきます。実施に向けて事業所内で共有しましょう。
【この記事のポイント】
- IT重説において遵守すべき事項がわかる
- IT重説において留意すべき事項がわかる
- IT重説の手順、方法がわかる
IT重説とは?
ご存知の通り、賃貸借契約においては宅地建物取引士が「借主への重要事項説明(以下、重説)」を実施することとなっています。この重説はこれまで宅地建物取引法第35条によって対面で実施することが定められていました。しかし2017年10月より、ITツールを活用し、非対面で実施できるようになったものが「IT重説」です。
IT重説では、パソコンやタブレット、スマートフォンなどを利用して画面上で説明し、お客様と質疑応答を行い、書類等は郵送でやり取りして手続きを進めます。そのため、対面での重説と同様に質疑応答が行えるインターネット環境が整っていることが前提条件となります。このIT重説により、お客様が重説のために来店する必要がなくなり、賃貸契約の利便性向上が期待されているのです。
IT重説のやり方とは?
IT重説において遵守すべき事項とは?
- お客様・不動産事業者の双方向でやりとりできるIT環境の整備
- 重要事項説明書等の事前送付
- 重要事項説明書等の準備とIT環境の確認
- 宅地建物取引士証の提示と確認
- IT環境に不具合があれば中断
これらは宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方に規定しており、遵守しなければならない事項です。まずはこの5つを守ってIT重説を実施できるように準備していきましょう。
【参照】賃貸取引に係るIT重説の本格運用の開始について(国土交通省)
IT重説において留意すべき事項とは?
- IT重説実施に関する関係者からの同意
- 相手方(お客様側)のIT環境の確認
- お客様の本人確認
- 必要に応じて内覧の実施
- 録画、録音した場合の対応
- 個人情報保護法に関する対応
こちらはトラブル回避の観点から、可能な限り対応することが望ましい事項とされています。必ずしも必須ではありませんが、お客様からの信用を得ることを考えるとこちらもできる限り対応すべき事項と考えられるでしょう。事業所の規模などにもよりますが、テレビ電話会議システムのアプリやサービスなどを上手に取り入れていくと、簡単に解決する事項もあります。
IT重説の方法
それでは実際にIT重説の流れをみていきましょう。
ステップ1. お客様のIT環境を確認する
まず、お客様がマイク、カメラ、スピーカー機能など、IT重説の条件を満たす機器をお持ちかどうか確認し、必要であればアプリをダウンロードしてもらうなどします。
ステップ2. 事前に接続テストを行う
接続テストの日時を決め、音声が切れることがないか、画面が止まらないか、宅地建物取引士証が確認できる映像の鮮明さがあるかなどの通信状態を確認します。また、ネットワーク環境なども確認し、通信速度が十分な回線で実施するようにしましょう。
ステップ3. 書類一式を送付する
契約者に書類一式を郵送します。これは宅地建物取引士が記名押印した書面であることが必須事項です。お客様に事前に確認していただくためにIT重説の前日には届いているようにしましょう。
ステップ4. IT重説を実施する
実際にIT重説を実施しましょう。必ず宅地建物取引士証を提示してお客様に確認してもらい、画面上の相手が契約者であることを確認してから始めましょう。実施中に通信障害等の不具合が起きた場合は直ちに中断します。
ステップ5. お客様に書類を返送してもらう
無事IT重説が終了したら、契約書類一式および必要書類を返送してもらいます。
ステップ6. 鍵の引き渡し
契約開始日またはその前日までに鍵をお渡しします。
IT重説に必要なもの
それではIT重説を始めるに当たって、準備するものについて説明します。
1. IT環境
まず、なんといってもIT重説にはネットワーク環境が必要です。画面が静止してしまったり、音声が途切れたりした場合はIT重説を中断しなければなりません。ですので、なるべく安定したインターネット接続環境を整えましょう。また、宅地建物取引士証などが確認できるよう、十分な解像度のカメラや、音声のやりとりのためにマイクなどの音響機器などの性能も確認しておきましょう。
2. Web会議システムなどの導入
IT重説を行うため、チャットアプリケーションやWeb会議、テレビ電話会議システムなどを用意します。無料で利用できる簡単なアプリから、IT重説やWeb接客に特化した不動産業者向けの有料サービスも登場。有料サービスは安価なものからそれなりの金額がかかるものまで様々な種類のサービスがあります。
コストがかかるものはその分、セキュリティの安全が保たれる、録画録音機能がついている、フォローが受けられる、オンライン内見の機能がつく、など機能が充実しています。IT重説への取り組みやスタンスによって、どのシステムを導入するかそれぞれ検討してみてはいかがでしょうか。ここでいくつかご紹介していきます。
ES×MeetingPlaza
【URL】https://www.es-service.net/service/meetingplaza/
IT重説、オンライン内見などWeb接客に特化したWeb会議用のクラウドサービスです。このサービスはお客様をメールのみで招待できます。そのためお客様用IDを発行したり、お客様にアプリをダウンロードしてもらうなどの手間がかかりません。スマホやタブレットでも利用できるため、比較的導入しやすいシステムです。
LIFULL HOME’S LIVE (LIFULL)
【URL】https://www.homes.co.jp/online/
IT重説とオンライン内見のサービスです。初期費用はかかりますが、無料でトレーニングや相談などのフォローがついており、月額費用は店舗ごとの定額です。また、国内最大級の不動産ポータルサイトLIFUL HOME’Sからの反響が期待できます。
Skype
【URL】https://www.skype.com/ja/
みなさんも、一度は聴いたことがあるオンライン通話アプリ「Skype」。お客様に事前にアプリをダウンロードしてもらう必要はありますが、基本的には無料で利用できることと、使いやすさは抜群です。ただし、セキュリティ面で若干リスクが高くなります。録音録画機能もついていないので、他のソフトなどで対応する必要があるでしょう。また同じMicrosoft社からセキュリティが確保された法人向けサービスもあります。こちらは内容によっては有料になりますが、他と比べるとコストは抑えられるでしょう。
IT重説のメリット・デメリットとは?
メリット
1. 時間コストと費用コストを抑えることができる
2. 日程調整がしやすい
3. お客様へ伝えた内容、担当者の対応を残すことができる
IT重説の大きなメリットとしては、お客様、対応者ともに時間の融通がききやすくなること、お客様に交通費や移動時間などの負担をかけなくてすむことです。遠方のお客様や多忙なお客様は、IT重説を実施しているかどうかで物件選びをスタートする可能性も考えられます。そのため、IT重説を実施することで集客効果が望める可能性もあります。
デメリット
1. 環境整備が必要である
2. 手軽ゆえに軽視されることも
3. 通信障害や機器の故障が起きることがある
デメリットは、環境整備や通信障害など、お客様、事業所ともに事前準備が必要なことや通信環境に左右される可能性があげられます。
しかし、デメリットはクラウドサービスを取り入れるなどの工夫次第で最小限にとどめられると考えられます。メリットの大きさとデメリットを解消するための負担を天秤にかけて導入検討されるとよいでしょう。
メリット・デメリットについて詳しくは下記の記事で紹介しています。
【関連】IT重説のメリットデメリットについて解説【不動産事業者向け/2019年12月最新】
IT重説のやり方まとめ
本記事では以下のようなポイントでお伝えしてきました。
- IT重説において遵守すべき事項がわかる
- IT重説において留意すべき事項がわかる
- IT重説の手順、方法がわかる
IT重説は一見とっつきにくそうにも感じられますが、基本的にはIT環境さえ整えることができれば、通常の重説と変わりなく実施できます。事業所の状況やスタンスに応じて、それぞれに合ったアプリやクラウドサービスを活用することで、さらに実施しやすくなるでしょう。
ただ、本格的にIT重説を導入する前に、事業所内で上記にあげた遵守事項や留意事項についてしっかりと共有する必要があります。テレビ電話など画面上でやりとりをする場合、話すスピードや声の大きさ、話し方、間の取り方なども対面とは変わってくる部分も。これらをまとめて、IT重説のやり方として勉強会や研修などの実施をオススメします。そうすることで、社員の全体的なスキルアップにも繋がっていくのではないでしょうか。
国土交通省や地方整備局では、これからIT重説を活用しようと考えている事業者に対して相談窓口を開設しています。何かあればそちらの利用もご検討ください。
本メディアでは、今後も最新の不動産テックの情報などをお届けして、不動産事業者のサポートをしていきます。