近年、「ビックデータ」「IoT」「AI」があらゆる分野のビジネスで注目されています。勿論2019年の不動産業界も例外ではなく、皆さんも様々なメディアでこれらの言葉に出会うのではないでしょうか? 今回はその中でも「ビックデータ」に着目して、その活用方法の例や、いくつかの不動産テックサービスをご紹介していきます。
まずは「ビッグデータ」について、おさらい
「ビッグデータ」とは、通常は次のように大きく3つの性質を持つと認識されています。
まず、「一般的なデータベースや処理システムでは記録や解析や保管をすることが困難なくらい、大量なデータの集合」であること。次に、「様々な種類や形式が含まれる構造化されていないデータ、あるいは非定型的なデータ」であること。最後に、「日々膨大に新しく生成・記録される続ける時系列性・即時更新性といった性質を持つ」こと。このようなデータが「ビックデータ」と呼ばれています。
シンプルに言い換えると、ビッグデータとは「量や種類が多く、変化する頻度が高いデータ」のこと。このようなデータは、スマートフォンや電子決済、そしてIoTの発展によって生み出されるようになりました。そして従来は量的にも質的にも扱いが困難だったビックデータの活用を可能にしたのが、AIの機械学習やディープラーニングといった技術の発展です。ビックデータはAIによって規則性やルールなどを見出されて整理され、予測や分類、人的作業の自動化などに役立てられているのです。
例えば楽天グループでは、Eコマースにおいて、購買行動や検索行動などのビッグデータの分析により、ランキングの更新頻度の向上とジャンルの細分化で売上を上げたという事例があります。
【参照】流通BMS.com|楽天の執行役員がビッグデータでEコマースの売上げを急伸させた秘策を公開 ――流通システム標準普及推進協議会 2014年度通常総会――
不動産×ビックデータと言えば、価格査定業務に効果を発揮!
それでは、不動産業界向けに提供されているビッグデータを活用したサービスには、どのようなものがあるのでしょうか?日本国内で多く提供されているのは、不動産価格や賃貸価格の算出といったサービスです。他に営業支援や投資物件価値予測のサービス等もありますが、そちらは今後のテーマとし、本記事では価格査定サービスにフォーカスしてみます。
これらのサービスが不動産業者側にもたらすメリットは、3つあります。
1.査定、算出結果の精度向上
従来の不動産査定は、不動産会社の担当者個人の知識や経験、土地勘等に基づいて行われてきました。個人としては経験や知識が豊富な担当者であっても、1人のもつ情報量には限りがありますし、他の担当者と比較すると重視するポイントや評価にはどうしても違いが生じてしまいます。そして査定結果にもブレが出てしまうのです。しかし数千万軒、1億軒単位の不動産のビックデータを根拠とする不動産テックのサービスであれば、客観的で精度の高い結果を導くことが可能です。
2.所要時間の短縮
通常の査定には、調査や分析にある程度の時間を要します。しかしビッグデータやAIを活用したサービスは、瞬時に価格や価値の算出できるものがほとんどです。オーナーさんやお客様を待たせずに対応が出来れば仕事の進捗も加速しますし、会社全体としても労働時間の短縮や業務効率化に繋がります。
3. 経験の浅い担当者でも対応可能
これまでは担当者の知識や経験が必要だった不動産査定業務ですが、査定サービスを活用すれば操作を覚えるだけで精度の高い結果を導くことが可能です。よって、不動産業界での経験が浅い担当者でも対応が可能になります。
実際に使えるサービスをご紹介
不動産業者向け、およびオーナーさん向け両方のサービスをご紹介していきます。
スタイルレント(不動産業者向け住宅賃料査定システム)
「スタイルレント」は、東京都中央区のスタイルアクト株式会社が提供する、Web上で賃料を査定するサービスです。10年間で蓄積した賃貸物件に関する1億件以上のビッグデータを利用して、1分で賃料査定が可能。また賃料査定だけではなく、ビッグデータの分析結果から空室物件に悩む物件オーナーへのリフォームなどの改善提案も行なっています。
GEEO(不動産及び金融業界のプロフェッショナル向け分析サービス)
株式会社おたにが提供するこのサービスでは、詳細な条件を指定して価格の算出ができます。時系列データとその移動平均線の表示ができ、2007年からの成約情報も閲覧可能です(日本全体の30%)。無料で使えるGEEO Freeと、プロフェッショナルのためのGEEO Pro Acountがあります。後者は不動産の販売や仲介における値付けとしてだけでなく、キャピタルゲインとインカムゲインを狙った 投資の判断等にも使用可能です。
ウルアパ(オーナー向け賃貸アパート・マンションの売却価格査定査サービス)
清陽通称株式会社が運営する「ウルアパ」では、1棟賃貸アパートやマンションの査定を、誰でも何度でも完全無料で行なうことができます。3分ほどで不動産売却査定が可能で、実際に不動産を売却する時の参考にすることができます。もしこのサイトで査定された金額と、実際の不動産会社での査定金額に大きな差が出た場合、運営会社に問い合わせれば原因を調査し、正確な査定額を再度算出してくれるのも安心です。
イシエル (オーナー向け マンションの部屋別価格査定サービス)
「イシエル」は、東京都品川区にある株式会社リブセンスが提供する、中古マンションの市場価値をリアルタイムに査定するサービスです。約9,000万件の賃貸情報、売買履歴などのビッグデータをもとに現在の不動産の価値を査定可能。また、同サービスでは不動産アドバイザーによる無料相談サポートも行っています。
不動産テック先進国!米国のビックデータ活用サービスの例
最後に米国の2つのサービスをご紹介します。価格や賃料査定サイトではありませんが、ビックデータの活用事例として、ご覧ください。
HomeLight (不動産エージェントと顧客のマッチングサービス)
「HomeLight」は、アメリカのサンフランシスコに本拠地を置く不動産紹介会社です。不動産エージェントと顧客をマッチングするサービスを提供している会社です。
同社は、日々の不動産売買における大量の取引データを収集しており、ユーザーはそのデータを元にしたいくつかの質問に答えるだけで、最適なエージェントを紹介してもらうことが可能。200万人の不動産エージェントに関するデータと、2,900万の取引データを保有し、これをビッグデータとして活用しているようです。
Trulia (地図上での地域情報提供サービス)
「Trulia」はアメリカのサンフランシスコに本社を構える不動産テック企業です。物件に関する情報を、Googleマップ上でビジュアル化するサービスを提供しています。Webとアプリの両方で利用でき、地域周辺の物件や平均賃料、価格推移の情報を提供。加えて交通量や学校までの距離・レストランの数・居住者の年齢層・犯罪率などの情報も公開しています。物件周辺のデータを収集し活用することで、画面上で直感的に“地域のようす”がわかるサービスを展開し、誰でも無料でアクセス可能です。日本の「SUUMO」や「HOME’S」に似た立ち位置のサービスです。
まとめ
これまで担当者の経験や土地勘、知識によって行われてきた不動産査定も、ビッグデータを活用することで、より客観的な査定が可能になってきました。また物件情報や賃料はもとより、犯罪発生率や渋滞情報、学校までの距離など物件周辺の住環境もデータによってわかりやすく提供できるようになってきています。
今後、さらなるビッグデータの活用によって、より多くの不動産情報をお客様に提供可能になるのではないでしょうか。アトリクブログでは、今後も不動産の最新情報をお届けしてまいります。
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