今、日本全国でキャッシュレス決済の普及を加速させているのが、2019年10月に施行されたキャッシュレスポイント還元事業。特にQRコード決済の認知度は高まり、登録ユーザー数も増えていることから、これを取り入れる企業や店舗が増加しています。
そんな流れのなか、今も口座振込の慣習が根強く、キャッシュレスが普及していない不動産業界でも、キャッシュレスで家賃や管理費などを支払いたいという要望が増え始めています。
そこで本記事では、このような方のための記事を書きました。
「競合他社がキャッシュレス化に対してどんな取り組みをしているかを知りたい」
「家賃支払いにキャッシュレスを導入するべきかどうか分からない」
【本記事のポイント】
- 不動産業界でキャッシュレス支払いが対応しにくい理由とその背景がわかります
- 家賃支払いをキャッシュレスにするメリットとデメリットを解説しています
- 事例を詳しく学ぶことで、キャッシュレスを導入するかどうか判断材料になります
本記事で、キャッシュレス支払いの概要を知り、不動産業者としてお客様対応などにぜひお役立てください。
家賃のキャッシュレス化、QRコード決済の現状
2018年9月の「NIRA総研 キャッシュレス決済実態調査」によると、家賃や管理費の支払い方法で最も多かったのが、口座引き落としの49.2%。それに対してクレジットカード払いはわずか11.7%でした。2016年12月時点でクレジットカード払い対応をしている不動産会社には「大東建託」や「アパマンショップ」、「レオパレス21」などがありましたが、全体的にキャッシュレス支払いに対する割合は全体の1割程度。不動産業界ではキャッシュレスが主流とはいえない状態です。
そんな中、近年スマホ決済サービスの拡大を受け、2018年に「アイ賃貸(R)」、2019年に「エイブル」がスマホ決済サービスPayPayを導入しました。これをきっかけに、今後は不動産業界でもQRコード決済による支払いが普及すると予測されます。
キャッシュレス決済の主流であるクレジットカードは、なぜ不動産業界では普及していないのでしょうか。その理由は大きく3つあります。
1.不動産会社の利益が減ってしまうから
顧客がカードで支払うと、不動産会社はカード会社に手数料を支払わなければならないため、不動産会社の利益が減ってしまいます。不動産会社としては、できるだけ利益の満額を取りたいのが本音。ほとんどの不動産会社が利益を優先させたいため、クレジットカード支払いの導入に踏み切れないのです。
2.物件選びの決め手になりにくいから
顧客にとって物件の決め手となるのは、家賃はもちろん間取りやエリア、住みやすさです。不動産業界では、支払いのときにクレジットカードが使えるか、支払いでポイントを貯められるかを重要だと考える顧客は少ないと考えられてきました。キャッシュレス対応を望む顧客の少なさが、今まで導入されて来なかった原因の一つと考えられます。
3.クレジットカード読み取り機器の導入に費用がかかるから
3つ目は「クレジットカード読み取り機器の導入に費用がかかるから」です。QRコード決済が普及する前は、クレジットカードがキャッシュレス支払いの代表的な方法でした。しかし、カードを読み取るには店側で専用の機器を導入しなければならず、初期導入や運用にコストがかかってしまいます。そのコストをネックにする不動産会社が多かったので、ほとんどの会社がクレジットカード支払いを導入しないまま、キャッシュレス支払いの波に乗れていないのです。
QRコード決済のメリットデメリット
ここまでQRコード決済の現状についてお伝えしてきました。ここでは、家賃支払いにQRコード決済を取り入れるメリットとデメリットについて紹介します。
クレジットカードの場合、端末機器によりますが機器の初期導入費用がかかり、カード支払いの手数料は4〜7%とされています。一方QRコード決済の場合、初期導入費用はほとんどかからず、手数料は3〜4%とされています。(※)
※ クレジットカードやQRコード決済の導入費用や手数料について詳しく知りたい方は、キャッシュレスポイント還元事業(https://cashless.go.jp/)またはクレジットカード端末機器会社、QRコード決済会社のホームページをご確認ください。
QRコード決済をすることで入居者はポイントを貯められます。支払いで得られる通常ポイントに加え、ポイント還元キャンペーン中であれば、お得にポイントがもらえる可能性もあります。また、QRコード決済を介せば、利用履歴がデータで残るので支出を管理しやすくなるのも入居者にとっては嬉しいところです。
QRコード決済はバーコードの読み取りが必要なため、顧客は支払いのために店舗に行かなければなりません。(最近では、払込票のQRコードで決済できるようになってき始めているようです)
さらに、店舗側もQRコード支払いに来る顧客の対応をしなければならないため、業務が非効率になる可能性があります。口座引き落しの場合、顧客は支払う作業の手間もなく店舗側も入金の確認をするだけですが、QRコード決済だと顧客対応の手間が増えてしまいます。
そのため、QRコード決済は仲介手数料や更新料などの一時金の支払いに向いていると考える不動産会社もあります。(2019年12月現在)
不動産関係者はQRコード決済に関する知識を身に付けておかなければ、万が一のときに顧客対応に支障をきたす可能性もあります。
最近、QRコード決済に関する詐欺や乗っ取り、システムエラーによる利用停止に関するニュースが取り上げられています。もしものとき、会社への信頼を損なわないために、会社全体でリスク対応に関する研修を行うなどの対策が必要になるのです。
QRコード、キャッシュレス決済サービス3選
QRコード決済の利用者が増えていく現在、家賃支払いに向いているキャッシュレス支払いサービスにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、「PayPay」「hubees(ハビーズ)」「PAYGATE Station(ペイゲートステーション)」の3つをご紹介します。
1. PayPay
2018年12月実施の「100億円あげちゃうキャンペーン」で一気に知名度と登録者数を上げたPayPay。PayPay残高利用の上限が50万円と高額であること、登録ユーザー数が1,500万人を突破したことで、PayPayを家賃支払いに導入する不動産業者も増えることが予想されます。また、Yahoo!カードでチャージすればTポイントが貯められるため、家賃支払いでポイントをたくさん貯めようとする顧客を囲い込む戦略を立てることもできます。
2.hubees(ハビーズ)
「hubees(ハビーズ)」とは、クレジットカード決済サービスを提供している企業です。不動産業界に特化し、導入実績は3,000件以上で業界シェアナンバーワンを誇ります。「メールでビュン!決済」では、EメールやQRコードを利用してスマートフォンやPCなどに決済URLを送信することによって、非対面で家賃や入居費用を支払えます。QRコードやクレジットカードだけでなく、コンビニオンライン決済やPay-easy(ペイジー)決済にも対応しています。
3.PAYGATE Station(ペイゲートステーション)
「PAYGATE Station(ペイゲートステーション)」とは、株式会社ロイヤルゲートが提供する、クレジットカード・QRコード決済・電子マネー・共通ポイントの支払いを可能にする端末のことです。多くの決済ブランドに対応しているだけでなく、多様な連携方法でPOSや基幹システムと簡単に連携できます。店舗は月額利用料金を負担することになりますが、この端末1台でさまざまな支払い方法に対応できます。
QRコード決済 まとめ
本記事では以下のようなポイントをお伝えしてきました。
- キャッシュレス支払いが対応できていない理由とその背景がわかります
- 家賃支払いをキャッシュレスにするメリットとデメリットを解説しています
- 事例を詳しく学ぶことで、キャッシュレスを導入するかどうか判断材料になります
今後は不動産業界でもQRコード決済などのキャッシュレス支払いが普及するでしょう。競合他社や顧客の動向をみながら、支払い方法の多様化を検討してはいかがでしょうか。
本メディアでは、今後もこのような不動産の基礎知識や最新の不動産テックの情報をお届けして、不動産事業者のサポートをしていきます。