ZORC(ゾーク)という言葉を皆さんはご存じでしょうか? ZORCとはアメリカの不動産テック企業で、不動産業界に影響力がある4社の総称。不動産業界のGAFAともいわれています。(ちなみにGAFAとはGoogle、Apple、Facebook、Amazonのこと)
本記事ではこのZORCについて解説します。ZORCはテクノロジーを活用して、アメリカの不動産業界を牽引しているといわれています。今後、日本の不動産業界にも大きな影響を与える存在といえるでしょう。そのため不動産事業者は、とくに要チェックです。
この記事のポイント
- ZORCについてわかる
- 各不動産テックの特徴がわかる
- 不動産テックについて詳しくなれる
ZORCとは?
- Zillow(ジロウ)
- Opendoor(オープンドア)
- Redfin(レッドフィン)
- Compass(コンパス)
ZORCとは不動産テック業界のGAFAともいわれています。4社は不動産の売買や賃貸に関するポータルサイトを運営しており、現在も熾烈なシェア争いを続けています。当初は4社とも物件の売り手と買い手をつなぐマッチング事業を展開していましたが、4社それぞれ独自のビジネスモデルを構築しオリジナルサービスを運営しています。それぞれユニークな特徴があり、得意分野も異なっています。
【各不動産テックの特徴を端的に紹介】
- Zillowは広告収入モデルを展開。物件の買い主が欲しい情報を提供することでサイトに誘導。物件の売りエージェントが、広告費をZillowに支払って物件を掲載し買主を見つける、という流れ
- Opendoorはアルゴリズムを活用して不動産の価格を査定し、直接買い取るモデル。不動産業界初の保証付き物件の提供も
- Redfinは物件情報も提供しながら自社で不動産エージェントを抱え、仲介料をエージェントとシェアするモデル。広告収入と仲介料の両方が収益源
- Compassは不動産エージェント向けのサービスを提供して収益を得るモデル。トップエージェントの採用に加えて、仲介業者の買収によってエージェントの囲い込む戦略
またZORCは、物件の売買主に対して以下のメリットを提供しています。
・物件価格の透明性
・豊富な物件情報にアクセスできる
ZORCの登場によって、一般の方でも、仲介業者を利用しなくても物件情報がインターネット上で閲覧できるようになりました。まさに従来のやり方を一新し、不動産業界に新しい仕組みを作ったのがZORCです。
次章では、ZORC4社それぞれの特徴を解説します。
不動産テックZillow(ジロウ)
1つ目はZORCの「Z」、Zillowです。アメリカの不動産情報サイトの最大手といわれているZillow。2006年に設立したアメリカの不動産情報サイトです。Zillowは積極的にM&Aを行いながら成長し、2014年には同業種の「Trulia(トゥルーリア)」を買収することで、全米における不動産検索サイト市場でシェアNo.1を獲得。1億件を超える不動産データを保有する大手サイトに成長しました。
そのため、Zillowが自社データを活用してAIで算出した不動産想定価格は、アメリカにおける不動産取引の判断基準にもなるほどの影響力があるようです。(ちなみにこの不動産推定価格は「Zestimate」と呼ばれています)
またZillowの主な収益源は広告掲載料で、大手不動産会社や独立系不動産会社に所属する個人エージェントが支払う広告掲載費で構成されています。個人エージェントのZillow利用人数は約92,000人。アメリカにはブローカーライセンスを持つ個人エージェントが200万人いるので、それを考えるとZillowはまだまだ成長できる可能性を持っているといえるでしょう。
不動産テックOpendoor(オープンドア)
2つ目はZORCの「O」、Opendoorです。Opendoorは、2013年に創業されたアメリカの不動産テック企業「Opendoor Labs Inc」が公開した、アメリカ初のオンライン買取再販プラットフォーム。オンライン買取再販を主要事業としたビジネスモデルを展開し、オンライン買取再販業の先駆者的存在といわれています。
Opendoorは、物件の買取をオンライン上で完結でき、物件売買の期間を短縮することに成功。通常物件の買取には、売却の相談から引き渡しまでさまざまなプロセスがありますが、Opendoorを使うと査定・買取・入金がオンライン上で完了します。売主の手間をできるだけ省いた買取サービスがOpendoorです。
さらにOpendoorには「業界初の保証サービス」があり、Opendoorで物件を買うと「30日間キャッシュバック保証」と「2年間の修繕保証」がついています。Opendoor Labs Incから購入した中古物件に住んでみた後、満足できない場合はどんな理由でも30日以内ならキャッシュバック保証。そのためOpendoor Labs Incが所有する物件は、平均の3倍ほどの内覧希望者を集めているといわれています。
不動産テックRedfin(レッドフィン)
3つ目はZORCの「R」、Redfinです。Redfinはアメリカの不動産情報を検索できるサイトで、2004年に設立されました。その後2006年には、物件の購入・販売サービスもスタートし、広告費と仲介手数料の双方が収益になるビジネスモデルを展開しています。
Redfinは、情報優位にある不動産業者やエージェントファーストな業界から「ユーザファースト」へ移行させることをミッションとしています。テクノロジーを活用して自社エージェントの業務効率を改善し、コミッション割合を下げるという戦略で、不動産業界に変革を起こそうとしています。
Redfinは不動産仲介業も手掛けていることから、MLS(Multiple Listing Service)という、不動産データベースシステム(日本でいうREINS)を活用しています。そのデータを即座に自社サイトへ反映させ、「不動産推定価格の算出精度の高さ」と「自社サイト掲載物件の更新力」を維持。さらに仲介手数料が一部変換される仕組みを導入しているので、売却にかかる手数料が安くなるというメリット提供しています。それによって市場の拡大と、自社ミッションの達成を推進しています。
不動産テックCompass(コンパス)
4つ目はZORCの「C」、Compassです。Compassは2012年に設立された、アメリカでも比較的新しい不動産会社で、ソフトバンク・ビジョン・ファンドも出資をしている不動産テック企業。Compassの主要事業は、不動産売買や賃貸に必要な情報を集約し、可視化したプラットフォームの運営をベースとした不動産仲介業です。具体的には、顧客とエージェント、もしくはブローカーをつなぐ不動産仲介業です。
そのためCompassにはエージェントあるいはブローカーの情報が掲載されており、その人物を判断するための詳細情報が記載されています。具体的には、経歴・学歴をはじめ、受賞歴・得意分野・過去の売買経験・過去の契約履歴・どのような物件のエージェントをしているか、なども紹介されているようです。
またCompassには、自社サイト限定物件「Compass Exclusives(コンパス エクスクルーシブ)」があり、「Redfin」や「Zillow」などの他業者が紹介できない物件も所有しています(期間限定)。さらにCompassはカスタマー向け(BtoC)と、不動産業者向け(BtoB)の両方のサービスを展開しています。
ZORCについての要点まとめ
本記事ではZORCの特徴や魅力、海外の不動産テックの最先端の情報をご紹介してきました。
【本記事の要点まとめ】
- ZORCは、アメリカの不動産テックZillow、Opendoor、Redfin、Compassの頭文字
- ZORCは不動産業界のGAFAともいわれている
- ZORCの登場によって、一般の方でも、仲介業者を利用しなくても物件情報がインターネット上で閲覧できるようになった
- ZORCの各不動産テックの詳細は本文中にて紹介
不動産業界もITの発達によってどんどん進化しています。これまで詳細な不動産情報は、不動産業者しか知ることができないものでしたが、今後は誰にでも手に入るものになっていくのではないかと思われます。
本メディアでは、今後も最新の不動産テックの情報などをお届けして、不動産事業者のサポートをしていきます。