皆さんは「iBuyer」という言葉をご存知でしょうか? iBuyerは、不動産売却ビジネスモデルの一つ。具体的にはAIのアルゴリズムを使い不動産の価格を査定し、不動産の売り手から不動産会社または不動産ポータルサイトが直接買い取るモデルです。
現在、この市場の注目度は高まっています。たとえば2018年にはパイオニア的存在の「Opendoor」が時価総額2,000億円で200億円の資金調達をするほど。今回はこのiBuyerについて解説します。不動産事業者はとくに要チェックです。
この記事のポイント
- iBuyerについてよくわかる
- iBuyerの具体的なサービスをご紹介
- 日本の不動産テックもご紹介
iBuyerとは?
冒頭でもご紹介した通り、iBuyerは、不動産売却ビジネスモデルの一つ。具体的にはAIのアルゴリズムを使い不動産の価格を査定し、不動産の売り手から不動産会社または不動産ポータルサイトが直接買い取るモデルです。
パソコンやスマートフォンの普及により、さまざまな業界業種でテクノロジーが進化しました。しかしそのなかで、不動産物件の売却には大きな変革が起きていない状態だったといわれていました。そこでAIの力を用いて、大幅な時間短縮と透明性をもたらしたのがiBuyerなのです。
売主からみた従来の不動産売却の課題点
売主からみた従来の不動産売却のよくある課題点は下記のようなものがあげられます。
- 物件がなかなか売れず時間がかかる
- 適正価格がわからない
- 内見の対応に追われる
- 買取希望者が査定に落ちてキャンセルになることがある
従来、不動産物件売却で発生していた、上記の売主の課題を、iBuyerが解決しました。しかしながら、AIのアルゴリズムを使用した査定も万能ではありません。築年数ひとつをとってみても古くてもヴィンテージがついたり、老朽化が激しかったりなど現状に差があります。
そういった不確定な振れ幅にアルゴリズムでの対応はハードルが高いようです。そのため現状では比較的条件が近い物件が集まっており、景気状況も安定した土地でのみ事業展開がされています。
アメリカで注目のiBuyer企業
アメリカのiBuyer企業で注目される企業としては、以下が挙げられます。
- Opendoor(オープンドア)
- Offerpad(オファーパッド)
- Knock(ノック)
- Zillow(ジロウ)
2014年のOpendoor設立後、2015年にはOfferpadとKnockが設立されました。Zillowはこの中では後発で2018年に参入しています。Zillowの本業は不動産仲介会社やエージェント向けの広告課金型ポータルサイトの運営です。
Zillowはアメリカ全土の1億件もの物件情報を有しており、多くのユーザーを抱えているアドバンテージがあります。今後アメリカのiBuyer市場はZillowが基盤を生かして掌握するか、Opendoorが先行優位を貫くか。今後の動向に注目したいところです。
【関連】アメリカの不動産テック(サイト・アプリ)Opendoorについて解説
iBuyerパイオニアのOpendoor
Open Door Labsは2014年3月に設立された不動産スタートアップです。仲介ではなく自社で住宅不動産を買い取って再販売を行っています。
Opendoorでは住所・築年数・修繕履歴などの情報をもとに、独自のアルゴリズムを用いて売却価格を予測します。
従来の仕組みでは、査定する人によって査定額が上下し安定せず、さらになかなか買い手が見つからないと対応に時間的コストが発生することになります。これにより売り主は、どのようにすれば最も利益が出るか把握しづらい構造となっていました。
その構造の時間的コストを解決したのが、買取再販市場です。売り主が購入者への販売まで行っていたところを、仲介会社が買取をして販売を行います。
ただしそれでもまだ、査定額の個人差の課題が残っていました。そこに対して一石を投じたのがiBuyerのOpendoorです。独自のアルゴリズムを用いて、素早く適正価格の算出を行えるようにしました。
これにより売り主は、迅速で安定した価格で住宅不動産の売却が可能となりました。一般的にアメリカの再販売却手数料が5%ほどに対し、Opendoorは6.7%~13%ほど。それでも急速にシェアを拡大していることから売り主にとってのメリットも大きいといえます。
【関連】アメリカの不動産テック(サイト・アプリ)Opendoorについて解説
日本のiBuyerベンチャー
すむたす買取
すむたす買取は、2018年に設立された株式会社すむたすによって運営されるサービスです。サイト内で物件情報を入力すると最短一時間で、買い取り価格がメールで送られてきます。そして現地確認を経て、買い取りが決まると売却金額が支払われます。この間、最短で2日間という早さです。
すむたす買取の特徴
- 最短1時間で買取価格が決定
- 個人情報の入力が必要なし。誰でも利用可能
- 仲介会社を挟まないので、仲介手数料は無料
Fantas Check
FANTAS checkは、2010年創業、年商100億円(2018年度実績)を超える、FANTAS technologyが運営するワンルームマンション査定買取サービス。査定から振り込みまで最短3日の、不動産検索から売却までのワンストップサービスです。
FANTAS checkの特徴
- 買取相場、販売相場、賃貸相場、地域データなどのビックデータをAIで解析
- 不動産歴が長い専門コンサルタントがサポート
- マンション所有者から直接買い取りをするので仲介手数料不要
LANDNET One
LANDNET Oneは2019年7月にリリースされたサービスです。最短1日で不動産の売買契約、現金振込まで完了するiBuyerサービスを提供しています。
LANDNET Oneの特徴
下記の2つのコースを用意
- 東京都内で所有マンションなら、最短1日(24時間)で現金支払いまで完了させる1dayコース
- 対象は日本国内。名前と電話番号、メールアドレスのみ必須項目で対応する2weeksコース
日本でもすでにiBuyper市場が形成されはじめており、上記3社が参入しています。
日本国内でも、査定のスピードとその透明性の高さに評価を受けているiBuyerサービス。一方で日本ならではのリスクとして、地震や台風など災害リスクで不意の価格変動をAIでどのように処理するかなどの課題感もあるようです。
また進化が目覚ましい不動産テックでは、不動産売買だけではなく賃貸仲介業者のコミュニケーションツールでも見られます。
Atlicu
Atlicuは「お客様と賃貸仲介業者間」のやりとりをお手伝いする、不動産の追客に特化したチャットアプリ。不動産賃貸仲介業者は、お客様に見やすい物件情報とメッセージを送ることができます。
コミュニケーションツールとして「LINE」を使われる方も多いかもしれませんが、LINEとは異なり、追客の履歴等を管理画面でスタッフが互いに共有できるのが特徴の一つです。また、不動産賃貸仲介専用のアプリであるということから、お客様が担当者と個人的にLINEでつながる必要がないなどの理由で安心して使えるようになっています。とくに女性のお客様に好評をいただいています。
【関連】不動産賃貸仲介会社のLINE(ライン)活用のメリットデメリットを解説
【まとめ】iBuyerについて
本記事ではiBuyerの特徴や魅力、日本のiBuyerについてご紹介してきました。
この記事の要点まとめ
- iBuyerは、不動産売却ビジネスモデル
- iBuyerでは、AIのアルゴリズムを利用して査定し、転売する
- 売却側は通常2ヶ月から半年掛かる時間を数日に短縮できる
- 日本でもスタートアップ企業が登場
iBuyerは、2014年にアメリカのOpendoorの設立を皮切りに一気に注目を集め始めました。日本でもiBuyerサービスが生まれており、この先ますますの成長が期待されます。
今後、日本でもさらに広く普及が進むことで不動産売却にまつわる時間と不透明感を解決していくことでしょう。
本メディアでは、今後も最新の不動産テックの情報などをお届けして、不動産事業者のサポートをしていきます。